2011年03月24日 被災に立ち向かう集団の姿(小説)
_ パラドックス13
東野圭吾著の「パラドックス13」という小説がある。読んだのは昨年だったろうか。
確か、地球にブラックホールが近づいて、13時13分、時空の破れが生じて、別時空に迷う紺でしまう人が何人か出るというSFチックな話から始まる。
しかし、主題は、SFとは関係ない。被災に立ち向かう小集団の姿をリアルに描いたもの。
舞台は東京。別時空といっても元の世界と変わらず、ただ大半の人々が消えてしまった状態。生きもの以外はそのまま残っている。
そんな中、ごく少数の人だけがその別世界にいる。その人たちが徐々に出会って集団を形成。
食べ物に執着する人、激変の中でも前の世界での上司と部下の関係に拘る上司、前の世界の規則に基づく正義感を振り回す人、それぞれ個性ある人たちが登場する。
そんな中で、警察官だった人がリーダー役として集団をまとめる。食料減、病気、死者の弔い、天候不順、地震、都心をも襲う津波など様々な難局に直面しながら、集団として生き抜くことをめざす。
途中、やくざと思われる人と遭遇し、その人を集団に受け入れるか否かで議論する場面もある。賛否両論あったが、結局、受け入れる。
孤立無援の集団が将来にわたって継続することを考えた場合、個々人の制欲の問題の他に、セックスをどう考えて実戦していくか、そんな問題も避けて通れない。
ともかく、天災に翻弄されながらも生き抜こうとする小集団の姿が、リアルに・丁寧に描かれていて、読みごたえのある小説だった。
このところの大震災の影響下で、ちょっと思い出した1冊。